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余白の時間


都市を漂う放浪者の雑記
by cotton-sneaker2
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■浅草三の酉

「さあ、行きましょ。思い立ったが潮時、行き時!」
所用から戻ってきた連れあいが、服も着替えずに言う。
天気もいいし、まだ昼間。いざ、念願を果たすべし。
我が家近くの停留所から『浅草雷門』行きのバスに乗った。
そう、三の酉、浅草・千束の鷲神社へ行くのだ。

バスは満員、運賃を入れる箱から硬貨がはみ出し、運転手は「次回に払ってください」という。なんともはや、さいさきの良きこと。
池袋と浅草雷門を結ぶこのバス路線は都内でも長距離。
池袋・巣鴨・団子坂下・根津・道灌山下・西日暮里・三ノ輪・竜泉、そして浅草雷門。趣のある街を辿りつつの車窓見学もまた愉し。


■浅草三の酉_e0064347_1303320.jpg神泉で乗客がどっと降りる。我々も下車。屋台が並ぶ道は人、人、人…。
どうにか境内に入り込む。列んでやっとの参拝。来る時のバス運賃をお賽銭にして投げ込む。

念願達成に安堵しつつ、さっそく熊手の店子巡り。幾通りもの狭い通路に縦横無尽に店子が列ぶ。その居ずまいには、そことなく威厳があり格式を感じさせる。境内には屋台が一軒もない。酉の市そのものが凝縮されている感じ、さすが浅草だ。

熊手のトンネルを抜けると、またまた人の列。びっしりとした参拝客の流れで身動きがとれないほどだ。「拝処がふたつあるのかな?」とも思う。流れに逆らって出ようとすると、向こうから来たおばさんが「こっちには出口はないよ、あたしらも戻ってきたんだから」と言う。なにか変だな?

あとで判った。われわれがお参りしたのは酉の寺、今目の前にあるのが鷲神社。
お寺で柏手を打ってしまっていたのだ!本家本元には列外からの参拝!
なんともはや、田舎者丸出し、お上りさんそのもの!こっぱずかしいことったらありゃしね〜!

てなわけで少々意気消沈してたら、熊手の『吉田屋』が目の前に。飾りのすべてが手書き手作り、味わいのある熊手の風情が漂っている。伝統在る有名な店子である。
これ!これ!とばかりに、店のお兄さんに、いちばん小さな熊手の値段を聞いてみる。手が届く!と思った瞬間に「お客さん、あいにくともう名入れでご祝儀も頂いておりますので…」と小声でささやく。

店の番台に端座した女将さんがこちらを向いて、にっこりと微笑みながら言う。「ごめんなさいね、来年、朝一番にお出でなさいな」
ぴんと背筋を伸ばし座した和服姿の女将さん、威厳と風格と気品の充ちた風情に、こちらも姿勢を正す。さすが浅草だなあ〜!!
よ〜し!来年は朝一番に必ず来よう!一番小さい熊手から始めよう!
目標ができた。女将さんの一言で明るい気持になれた、じつにすがすがしい気分だ。


■浅草三の酉_e0064347_1305057.jpgいざ帰りなん、とばかりに大通りを渡ると宅配センターの中の人の動きが目にとまった。“浅草酉の市”と書かれた大きな段ボール箱、次々と詰められる熊手…。「これだあ」とばかりに段ボール箱を手に入れた。酉の市の江戸文字、相撲の巡業行李のような形、箱の横から出た熊手の柄は飛脚便の風情。なかなかやるではないか、佐川急便さん!

我が家へ辿り着いた時はもはや夕暮れ、へとへと。さっそく一献を頂く。
こっぱずかしい思いもしたけど、本家詣での念願がかなった。
いやあ〜、なんともはや良き三の酉だったこと。
来る年には、熊手で『開運招福』をかき集め、いっぱい酉の市箱へおさめよう。
by cotton-sneaker2 | 2008-12-01 01:35 | 雑記
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